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ぷち強い殴りプリの恋愛属性メイス

「いいですか。最初にサフラして、あとはヒールして下さい」

 時計塔の地下二階。ハイオークの住み処である『廃屋』の手前で、銀髪のポニーテイルを揺らし、男ハイウィザードのクロムが念を押した。

「はいはい、サフラにヒールでしょ」

 トリプルブラッディチェインを構えて、黒髪にヒュッケ耳をつけた女ハイプリーストのプリシアが答える。ロングヘアーの上で黒いネコミミがピコピコと動く様は、さながら本当に生えているように見える。

「では、行きますよ」

 時計塔三階に足を踏み入れる。
 かなりのモンハウだった。
 二人はあっという間に取り囲まれ、ハイオークの構えた斧に滅多打ちにされた。サフラをする余裕もなく、ひたすらプリシアはヒールを連打した。一方でクロムはというと、打ち合わせ通りに行かず、魔法の詠唱が遅れていた。

「ストームガスト!!」

 冷気が舞い、パキンと氷の粒が砕けて落ちる。同時に、プリシアはサフラギウムを唱える。そして、ヒールが間に合わずにクロムが死んだ。プリシアも倒れた。

「もうっ! 最初にサフラで、後はずっとヒールだって言ったじゃないですかっ!」

 セーブポイントに死に戻り、アルデバランの時計塔前で、クロムが黒い眼鏡を指で押し上げ直しながら怒りを露わに叫んだ。

「あんなに湧いてたらサフラなんてできないじゃない」
「言い訳は結構です。そう言いつつ、サフラしたじゃないですか。変なタイミングで」
「……私なりに考えたタイミングだったんだけど」

 カチンときたプリシアが不機嫌を隠さずに答える。

「だいたい、あんなレベルの違う狩り場に連れてっておいて人のせいにするの?」
「貴女のためでもあるじゃないですか。引っ張ってあげようと思ったのに」
「……はぁ!?」

 聞き捨てならない言葉に語気が荒くなる。

「引っ張ってあげる!? 何様なの!? あたしは一人でもレベル上げできます!」

 思わず、チェインのグリップを握る手に力が入る。

「い、いくら前衛って言い張っても、殴りプリじゃ…」

 クロムがたじろぎながら言った。

「クロムの……馬鹿ぁーーーーーッ」

 トリプルブラッディチェインがクロムの顔面にクリティカルヒットした。




「効率効率ってうるさいのよ。背伸びした狩場に行って死んだら怒るし!」

 プリシアはイズルードのベンチに腰掛けて、目の前で地面に落書きしている女チェイサーに話しかけた。
 相方のクロムがせがむので、真っ先にサフラギウムを取った。自分には使えないスキルだし、使えたとしても殴り型だからそんなに役には立たない。
 だから、せっかくのサフラギウムがこんな結果になってしまったこともあって倍悔しい。

「そりゃー、ついてくアンタにも下心がないとは言えないんじゃないの?」
「さらっと廃屋行くーって言ってたら、よく行く狩場なんだと思わない? WIZの狩場とか知らないし」
「ん~、転生前はよく行ってたんじゃない? まぁ、相方は純支援だったかもだけど」

 プリシアはそこで押し黙った。
 クロムと一緒に出かけるようになったのはつい最近だ。街やフィールドで、何気ない会話の端々に、転生前もプリースト(それも女性)と行動していたような過去の様子がかいま見える。でも、今はプリシアと一緒に行動しているし、特にどうというわけでもない。
 ……そもそも、恋人同士でもないし。

「つか、ヒュッケ耳で行くのもどうかと思うけどね~」
「ええっ……う、うーん、そんなに性能悪くないよ?」
「あたしが廃屋行くならお断りっ。行けないけどネ」
 プリシアは両手で両方のネコミミを引っ張る。耳が外側に垂れ下がり、困っているような風情を見せた。
「さっさと仲直りしてきたら?」
「……うー」

 プリシアは唸りながら、クロムと出会ったときのことを思い出していた。
 クロムと最初に出会ったのはアマツダンジョンの畳の迷宮だった。

「ハイプリになったら一緒に狩りに行こう」

 ハイアコライト時代のプリシアは、そう知り合い達に励まされ、はりきってレベル上げをしていた。
 カブキ忍者に遭って死んだところを、通りがかったクロムが生き返らせてくれたのだ。その後にクロムもカブキ忍者に倒されていたけれど。
 思わずクスリと笑みがこぼれた。
(WIZ様なのに、カブキ忍者で死んじゃったのよね……。ファイアーウォールも滅茶苦茶だったし)
 あのときに、あまりウィザードとしての腕がよろしくないことは想像できたが、一緒に狩りましょうと誘われたときは凄く嬉しかったのを覚えている。そのままアマツダンジョンの二階に行って大口蛙を狩った。
 クロムはプリシアが殴りだと分かって少しがっかりしていたようだったが、そこで終わるかと思ったら、次の日も、その次の日も狩りに誘ってきたのだった。
 何でも、殴りハイプリーストに興味が湧いたのだという。プリシアが意外と強いのに驚いたらしかった。
 殴りといっても、ハイプリだとアスムもできるし、むしろ支援ができるのに殴れるくらいに思っている。
 そう言うと、クロムはうんうんと頷いていた。

「成る程。それは是非、見てみたいものですね」

 適当に会話に合わせたような返事をしたが、今思えば、あれはクロムの本心だったのかもしれない。
 転職したら、プリシアの知り合い達とも遊びにいける。そんなことを言うと、クロムは前髪をかきあげて呆れたように応えた。

「プリになったら遊ぼうだなんて、虫のいい話だと思いません? 大変なのはアコライト時代なのに」

 ちょっと馬鹿にした言い方だったけれど、その言葉はプリシアを暖かい気持ちにさせてくれた。




「そこのお嬢さん」

 プリシアは声のほうを向いた。髪をおろしたクロムがいた。潮風に銀髪がなびいている。

「一緒にどこかへ行きませんか?」
「……効率にこだわらないのであれば」

 プリシアは立ち上がった。何か言わなきゃと思ったが言葉が出てこない。チェイサーが隣でプリシアとクロムを好奇の視線でじろじろと見ている。
 クロムは肩に垂れた髪を後ろへと払い、こほん、と咳をして喉の調子を整えて言った。

「実は私、貴女がいないと髪がうまく結べないんです」

 クロムの言葉を聞いて、プリシアは吹きだした。

「切ればいいじゃない」
「えっ……ええっ!?」

 クロムが驚きの声をあげた。

「あ、あのー……本気で言ってます?」
「冗談よ」

 喧嘩の後で、一体どんな顔で会えばいいのか、最初の一言は謝るのか怒るのか普通に話しかけるのか、何にしようかとうじうじ考えていたけれど、クロムもおそらく同じ事を考えていて、悩んだ挙げ句に髪型をネタにしたのかと思うとおかしかった。

「あの、怒ってすみませんでした」
「もういいよ。あたしも、ごめんね」
「あと、そのう……効率のことを考えたら、殴りプリさんとは一緒にいませんから」
「……悪かったわね」

 クロムが神妙な顔で言った。

「私がプリシアと一緒にいるのは、その……」
「いいっていいって。ねえ、ODでリベンジはどう?」
「えっ!? いやあのー、最後まで聞いて下さいよ」
「言わなくても分かってるから」
「わ、分かってないです!」

 クロムのマントを引っ張って歩いていくプリシアを見て、チェイサーはやれやれと肩をすくめた。その足
元には、先ほどまで書いていた落書きが完成していた。
 残念ながらプリシアには見せられなかったが、なかなかの自信作だ。アコライト姿のプリシアの手を握り、クロムがニコニコしているイラスト。その下には驚くほど達筆な字でこう書かれていた。
『アコを拾わずんば、プリを得ず』と。



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ラグフェス19で発行したギルド誌に寄稿したものです。

以前、とあるお方にリクエストを頂いて無理矢理聞き出して「殴りプリで」とお題を貰ったものの、書き上がったのは二年後という申し訳のなさ。ご閲覧、有り難うございました。

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